未経験OKのパタンナー求人は「ほとんどない」のが現実ですが・・・
パタンナーの仕事が最近注目をあびています。
デザイナーがおこしたデザイン案を、実際の服にしたてるための設計図といわれる「型紙」におこすのがパタンナーの仕事です。
どんなに素晴らしいデザインを起こしても、パタンナーがいなければ、実際の服にならないわけです。
デザイン案というベースはありながら、デザインにこめられた風合いや素材感をいかに服として形作っていくかが求められるパタンナーの仕事は、デザイナーとは別のクリエイティビティが求められます。
というパタンナーの仕事ってなんだか面白そうですよね。
実際、最近パタンナーへの転職を希望する人は、
販売員をしているが、パタンナーに興味があるという人
デザイナーだがパタンナーへの転職を考えている人
など、アパレル業界の別の職種からの転職希望者が増えているように感じます。
パタンナーで未経験者OKの求人ってあるのでしょうか?
では実際に、未経験者OKのパタンナーの求人があるのか調べてみました。
数字がパタンナーの求人件数で、矢印の先が未経験者OKの求人件数です。
●DODA 求人件数 21件 → 未経験者OK 0件
●クリーデンス 求人件数18件 → 未経験者OK 0件
●とらばーゆ 求人件数3件 → 未経験者OK 0件
ということで、大手転職サイトの求人情報ではパタンナーの求人は経験者に限られています。
実際のパタンナーの求人情報ではこんな感じの条件がついていることが多いです。
1) パタンナーの実務経験3年以上
2) CAD(東レ社製)の使用経験
東レのCADソフトはパタンメイキングソフトで90%以上という圧倒的なシェアを誇るソフトです。
パターンメイクは最終的にCADソフトにまとめるのが一般的なので、立体裁断ができるとしてもCADソフトが使えないと、あとあとで苦労するかもしれませんね。
パターンメイキングのCADソフトについてはこちらの記事にまとめています。
→ パタンナーの求人で有利な経験や資格、使えるソフトってあるの?
パタンナー転職には実務経験が必要?
大手の転職情報サイトをみるかぎり、パタンナーの求人には「一般的には」パタンナーの実務経験が求められる、ということですね。
とすると、パタンナー転職希望の人がやるべきことは、
1.パタンナーを募集している企業に、未経験で採用してもらえないか交渉する
「すごい安い給料でいいから、半年学ばせてほしい?」 といってパタンナー求人企業に交渉してみるという方法もあると思います。
月10万円とか、ぐらいですかね〜。でも、そんな余裕のある会社はあまりない気もします・・・
とすると、「未経験からパタンナーに転職する」ためには、次のアプローチになると思います。
2.実務経験はないけど、パタンナーの基礎スキルはあるので採用してもらえないか交渉する
パタンナーの基礎スキルとは、
CADが使える
とか
立体裁断ができる
とかになりますね。
「え、そんなの無理!」、と思った方、ご安心ください。基礎スキルを今から学べばいいのです。
社会人を対象とした平日の夜中心のパタンナーの専門学校って実は結構あります。
あのモード学園にもこんなコースがあります。
パタンナーのコースだけでなく、ドレーピング専門のコースもあるんですね。
学費は、週一回、半年間で64000円。全然高くないですよね。
あとは、CADのコースもあるので、個人的には、最初の半年はパタンナーのコースで、あと半年でドレーピングとCADのコースをとって、年間授業料は20万円弱。ここまでくると、「未経験ですが、パターンメイキングの基礎スキルは体得してます。」と自信をもっていえるようになりますね。
パタンナーの資格をとるのもひとつの手です。
「一般財団法人 日本ファッション教育振興協会」なる団体が、ファッションに関する資格試験を行っており、そのうちのひとつが、「パターンメイキング技術検定」です。試験は年に1〜2回行われています。
最上位の1級から3級まであってそれぞれの級レベルは以下のように定義されています。
1級
パターンメーキング技術を専門教育機関で履修あるいはその他の方法で習得し、アパレル企業のパターンメーキング部門などで、量産を前提としたパターンメーキング実務経験を5~6年程度積んだレベルを想定しています。
2級
PM3級取得者を主な対象とし、パターンメーカーを目指す学生やファッション業界における新人パターンメーカーに必要とされる、さらに高度なパターンメーキング技術と知識を問う内容です。ファッション(服飾)専門学校などで3年間、ファッション造形知識・技術、工業用パターンメーキングやグレーディングに関する専門的な教育を履修した程度の方が対象です。
3級
検定への入門段階として、パターンメーカーを目指す学生だけではなく、ファッション業界におけるクリエイターを目指す方であれば職種を問わず必要とされる内容です。ファッション(服飾)専門学校などで2年間、ファッション造形知識・技術とパターンメーキングに関する教育を履修した程度の方が対象です。
(Source: http://www.fashion-edu.jp/pt/pt.html)
ちなみに2級の問題はこんな感じです。
かなり実践的な問題ですね。
しかし、これができるようなら、パタンナーの経験がなくても「基本的な素地は理解している」と企業には感じてもらえそうですよね。
こんな対策本が出ているので、まずは、これで勉強してみる、というのもあると思います。
パタンナーやデザイナーのプロの学び方に学ぶ!
専門学校にいくにしても、自分で資格をとる勉強をするにしても、参考にすべきは、
パタンナーやデザイナーとして活躍する先輩方が、
若いころ、どのように基本を習得したのか?学んだのか?
ということ。
いくつかご紹介しますので、参考にしてみてください。
Scye パタンナー 宮原さん
売りを一切行わず質の高い服を展開するScye。本当に自信がないとできないことですよね。
宮原:基礎は文化服装学院で学びましたが、プロとして生きていくにはそれだけでは足りなかったので、僕の場合は昔の裁断書や古着から得たことが大きく影響していますね。英国のエドワーディアン時代の裁断書を集めて、時には国会図書館に行って資料を探したり、自分なりにパターンや構造の研究を重ねました。
現代の服は機能より見た目が重視されていることが多いですが、当時の服は剣を振るためだったり、馬に乗るためだったり、動きを考慮した作りになっている。それらを参考に、僕らが作っている服はデザイン線よりも機能線を重視しているのが特徴です。意味のある切り替えや仕様でなければ入れる必要はありませんから、「理にかなった服作り」が基本なんです。
http://www.fashionsnap.com/inside/scye-15th-interview/index.php
Allstyle 吉岡さん
セシオセラなどの若い女性のセンスある服を展開するAllstye
センスを大事にするその原点はパタンメイキングにおけるポリシーにも表れている気がします。
2年目の大失敗を乗り越えて
専門学校を卒業し、就職するならこの会社に!と決めた理由は、近年業界で主流のCAD(コンピューターによるパターン製作)ではなく、立体裁断からクオリティーの高い商品を作るメーカーだからです。
入社後は先輩のパタンナーについて、パターンコピーや生地への写し取りなどを行いながら、1〜2年かけてスカートなどの比較的簡単なアイテムを担当するようになりました。
ですが、ちょうどその頃、担当したスカートのベルト通しのサイズを間違えて作ってしまい、全ての商品が返品となる大失敗をしてしまいました。当然ですが取引先の商社から、かなりのお叱りを受け、精神的にものすごくショックを受けたことは今でも鮮明に覚えています。
でも、自分のミスで迷惑をかけてしまったのに、先輩、上司は物流面の対応だけでなく、精神的なフォローまでしてくださり、本当に支えられました。
そんな失敗があったからこそ、最終検品では細心の注意を払うようになり、不良品を出さないよう心がけることができるようになりました。
そして何よりも会社の温かさや、尊敬する先輩、上司とともに仕事ができる幸せを、今も実感しています。http://tas-f.com/recruit/interview-03.html
NYのハイエンドブランド「3.1Phillip Lim」パタンナー 川口亮さん
デザイナーの想いや考えを具体化し、生地や縫製、テキスタイルで形を表現し、求められている物のあくまも「一つ上」を提案していくのが基本スタイルだそうです。パターンメイククリエイターという感じですかね。
ー 2年生で皆さん今後の選択されると思うのですが、デザイナーと同じくらいパタンナーとは人気ある科だったのですか?
川口:みんなほとんどデザイナーを選択しますよ!正直パターンメイカーはあんまり人気のある職業ではないです。すごい技術的で数ミリ単位で頭を使って、物作りをしないといけないんですよね。
与えられたものを構築してくので、建築士に近いかもしれないです。
だけど、建築士と大きく違うのが素材が布なので硬い、柔らかいにあわせてパターンをあわせないといけないので、一人前になる為には相当な経験と時間が必要なのもあり、パタンナーは人気がないですね。
あと日本ではパタンナーよりデザイナーの方が高く評価されて、パタンナーが評価されにくい現実がありますね。
本当に影の存在と言ってもいいかもしれないですね(笑)だけど、僕は細かい事をするのが好きだったのもあったのでパタンナーが向いてたのかもしれないですね。
だけど、今でもデザイナーをやりたい!と思う瞬間はありますよ。
ー 面白いですね!パタンナーの職業が向いてる!ってわかってながらもデザイナーとして活動したい!って気持ちもあったんですね!大学を卒業してすぐニューヨークに行かれたのですか?
川口:いや、自分はパターンメイカーとして日本で就職しました。
当時は「やるんだったら女の子の服!しかも、ギャル服!」と意気込んでいて、なんかストリートの真逆がやりたくて考えた結果ギャル服でしたね(笑)
でも、その時は「絶対今後ギャル服が盛り上がる!」って本気で思ったんで、とりあえず109に入ってるようなギャル服系のブランドに履歴書を送りまくりましたね。
ギャル服と言えど就職は難しかったですが、とりあえずOEMに就職が決まって、当時は色々なギャル服のデザインを貰ってパターンに落として、工場とやりとりをしたり、サンプルをブランドに持って行ったりしていましたね。
この仕事は3年やりましたね。ここで学んだ事も後に活かされるなんて当時は思ってなかったです。
https://ny-pg.com/interview/akira-kawaguchi/
まとめ:未経験からパタンナーに転職する方法とは?
1. 基本を学ぶ
●パタンナーの専門学校の夜間コースで学ぶ
●パターンメイキング資格試験受験を念頭において、本などで学ぶ
2. 現役パタンナーの先輩の学び方で基本姿勢を学ぶ
●「パタンナー インタビュー」で検索すると現役パタンナーの方のインタビューがいろいろ見つかりますよ。
3. 転職エージェントに相談する
●最後は、パタンナーの転職に詳しい「アパレル専門の転職エージェント」にいろいろ相談してみるとよいと思います。
未経験者でも採用を検討してくれそうな会社も探せばありますよ。
普通にネットで求人情報を探すと「実務経験3年以上、CAD使える方」とかの比較的厳しい条件の求人しかみつからないかもしれませんが、転職エージェントに相談すると、コネクションがあるアパレル企業に「基礎スキルがあるが実務経験がない人材を採用してくれないか」というような交渉もしてくれます。
興味がある方は、専門学校に通い始める前でも相談にのってくれると思うので、連絡してみてください。
→ パタンナーの求人転職関連のお勧めの転職エージェントの情報はこちらの記事にあります。
パタンナー未経験から、専門学校で基礎スキルを体得した後でパタンナー転職に成功した事例はこちらになります。
→ 事例1.アパレルショップ店員からパタンナーに転職できました!
→ 事例2.派遣社員からパタンナーに転職成功しました。