パタンナー 仕事

パタンナーの仕事を一言でいうと・・・

パタンナーとは、ひと言でいえば「服の型紙を作る担当者」の職業名です。
型紙の「パターン(pattern)」の語尾に、職業とする人を表わす「er」を付けて、「パタンナー」とした和製英語で、アパレルメーカーが既製服を生産する際に必要なサンプル用の型紙や、量産用の型紙を作る専門職のことです。

 

英語で正しくはパターンメーカーですが日本では、現在パタンナーという言い方の方が一般的になっているようです。
パタンナーの仕事がどんなものであるかを理解するためには、服づくりを建築に例えてみると分かりやすいと思います。

 

これから造ろうとする建物の外観図は、服でいえばデザイン画に相当します。その絵を現実の形にするためには、設計図が必要となります。

 

仕事の分担からいえば、デザイナーが服の意匠(デサイン)を考案するのに対して、パタンナーは服の型紙を設計する役割になります。しかし、単にシルエットの美しさを表現するだけではありません。

 

布地の特性を考慮しながら、着やすく、また縫いやすくする総合的な服づくりの技能が要求されるのです。

 

パターンメイキングとは?

 

こでは、パタンナーの仕事の中核となるパターンメーキングがどんな内容をもつのか簡単に触れておきます。
パタンナーの仕事は、「服の型紙を設計すること」ですが、手法を大別すると次の2つがあります。

 

@立体裁断(ドレーヒンク)による方法

 

ボディーに直接トワルを着せ付け、鋏(はさみ)で余分な布を裁ち落とし、ビンで止めながら立体的に服の形を作ります。
これを平面に写し取って型紙に完成させるやり方です。一般的によくやられているやり方といえます。

 

詳しくはこちらの記事にまとめてます。
パタンナーの仕事:ドレーピングのポイント

 

A製図による方法(平面での構成方法)

 

立体裁断によって作った型紙・原型を利用して、服の種類や大きさ、シルエット、デザインなどを設計します。

 

※トワルとは?
麻、木綿などの平織布で、仮縫いに使われます。アパレルではコットントワル(木綿の布)が主に用いられています。

 

※原型とは?
おおもとになる型紙のことです。ボディー(人台)を平面に置き換えたものと考えればよいと思います。フォーム・スローパー、あるいは
ボディスローパーとも呼ばれるます。

 

「立体裁断」と「製図による裁断」の間には、手段において、立体と平面という大きな違いがありますが、服の造型の基本的な理論は共通です。

 

また、「製図裁断」の平面での構成方法に必要な正しい製図の理解力は、立体裁断においても不可欠といえます。

 

このほかに、「囲み製図」と呼んで、型紙の寸法を単純に図形化した方法や、「ラブ・オフ=型抜き」といって、既存の参考商品を立体上でトワルに写し取ったり、あるいは平面に広げた服や、ほどいたパーツを書き写す方法があります。これらは形を作る理論によらず、結果の形だを伝えたり、利用したりするイージーな手段といえます。

 

パタンナーの仕事の中で型紙作成と同じくらいに大切なものが縫製仕様書の作成です。
これには、縫糸の指定や、使用する芯の品番とアイロンでの接着条件や仕上がり寸法などをこと細かに記入していきます。
従って、縫製の知識なしに、その指図や仕様の説明はできません。

 

こうした服づくりに関する技術力や判断力すべてが、パターン製作の基礎的要因として欠かせないのです。

 

さらに、企画の進行に合わせて、シルエット原の製作や素材の可縫性テスト、部分縫い、芯地・裏地の選定、
とくに、サンプルの仕上がりチェックなどは重要な仕事で、寸法、芯地、縫製の仕ヒがりや風合いなどを見ることがありますが、場合によっては、アイロンを使った再仕上げやぼたん付けなどをすることもあります。

 

またこのほかにも、試着テスト、展示会ディスプレー要尺見積り、サンプルバターンの修正、量産用パターンの製作及びグレーディングの指示、企画や生産部門との各種会議や日常的な打ち合わせなど、数多くの仕事をこなすことが必要となります。
服づくりにおけるパタンナーの作業の比重の高さは、アパレルにおけるこの職種の重要さの証(あかし)とい
えます。

 

アパレルはコミュニケーション産業です。
アパレルでは、いくつかの専門的な職域に分かれて仕事が進行しますが、それぞれの内容は単一ではありません。
デザイナーはデザイン画を描くだけではないし、生産担当は工場に資材を送ったり、縫製のスケジュールを管理もしますし、同様にパタンナーも、パターンメーキングと並行して、山のような仕事に追われるのが現実です。

 

では、なぜそうなるのでしょうか?

 

アパレルの作業において、企画、デザイン、パターン、生産、縫製工場といくつものプロセスを経なければ服はできません。また、ひとつのモデル(作品)が複数の材料や付属類を必要とするため、手配が複雑になりやすいという特徴があります。

 

そのため各段階の担当者間で重複する領域が多く、そうしたつなぎ目で活躍するのもまたパタンナーなのです。
服の設計図に当たる型紙を作る立場から、必然的にほとんどの工程に関わることになるため、各担当者からの依存度がとうしても高くなりやすいのです。

 

1枚の服を作るプロセスには多くの人が関わりますがたからこそ、どんな服を作ろうとしているのか、プランドコンセプトや作品のイメージについて、各担当者が共通の認識をもっことが不可欠となります。

 

この意味からアパレルはコミュニケーション産業の最たるものだといえます。
そして、この緊密な関係の中で、キーパーソンの位置に立つのがパタンナーなのです。

 

制約とル-ルの中で感性を生かす仕事

 

何ごとによらす、自分の手で物を作るということは楽しいですよね。まして、美しいシルエットや独創的なデザインの服をイメージして、製図やドレーピングを行うパターンメーキングは、素晴らしい仕事ともいえます。

 

しかし、企業組織の中での仕事である以上、そこにはルールや制約がある。それは、プランドのコンセプト(理念)や作品の方向性であったり、着る人の体型やサイズ(商品の寸法)といった事柄で、これらを考慮しないパターンメーキングはあり得ません。「ルールなどを無視
して自由奔放にさせてくれたほうがよい作品を生み出せるのではないか」と思うかもしれませんが、決してそうではありません。

 

複数のスタッフが統一したコンセプトの下で製品を作るためには、一定の枠組みがどうしても必要となります。むしろ、それがあいまいであったり、ころころ変わるとしたら、混乱して仕事が進まなくなってしまいますよね。

 

*体型:「体つき」「体の格好」のことを指し、反り気味の「反身体」や猫背気味の「屈身体」などのことをいう。

 

アパレルメーカーが、商品として既製服を作るとき、その前段階で、重要な骨組みもいえるプランドコンセプトが存在します。
その商品を、どの市場に向けどのくらいの価格で売るか、また、購買者の年齢層やキャラクター設定をどのようにするのか。服種やイメージは、オーソドックスにするかファッショナプルにするか。
あるいは、フェミニンかユニセックスか、それともマニッシュにするか。
こうしたことを規定するブランドコンセプトは、プランドの発足と同時に確立されるもので、シーズンごとに変化するファッショントレンドのことではありません。

 

ブランドの存在理由に関わる根源的な事柄といえます。

 

その中でも大切なのは、「誰のために作る商品(服)なのか」です。

 

この設定のためにはターゲットとなる購買者層のタイプ別のセグメントが必要となります。

 

それは例えば、

 

☆年齢層
☆体型・サイズ
☆職業
☆収入
☆キャラクター
☆ライフスタイル
☆趣味嗜好☆その他

 

これらの要素が、作る服の商品としてのイメージや価格、素材や色柄の選定、さらにデザインやパターンメーキングに直接反映するのです。

 

夢を現実の形にする喜びが仕事

 

ひとりで服を作る場合は、まず布を選びデザイン画を描き、型紙を作ります。その型紙を基に布地や芯地・裹地を裁
断し、このあと縫製の丁程に入ります。

 

この順序は、企業でも、個人的な趣味で服づくりをする場合と大差がありません。しかし、多くのスタッフが関わり、毎シーズン、たくさんの作品を作り続けるためには、作業の分担と組織化が必要不可欠となります。

 

生活者のライフスタイルと価値観は著しく変化し、近年、市場はさらに厳しくなってきています。そこで、生活者の購買意欲を喚起
させる魅力的な商品を開発するため、商品企画のサイクルはますます短くなっています。

 

以前のように、シーズンごとというわけにはいきません。定期的な展示受注会やその間隙(かんげき)を縫って作る追加商品などを含めると、ほぼ毎日、新しい商品を作っているのが現状です。こうした状況の下で、企業が生き残っていくために求められるのは、質的にも効率的にも向上が得られる組織化なといえます。

 

そのために、作業は分担され、商品コンセプトに基づいて企画、立案がなされ、アイテム構成や仕入れ先との商談も進められるのです。その一方で、デザイナーは、情報の収集をして常にアイディアをストックしながらデザイン画を制作していきます。

 

そしてパタンナーは、そのデザイン画からイメージを汲み取って型紙を作り上げていきます。パタンナーの仕事とは、夢(イメージ)を現実(服)にすることといえます。これは、服を創造するうえでデザイナーに比肩する専門家の仕事といえます。

 

パタンナーへの道は服作りが好きならトライしてみる価値が十分にあるといえます。

 

バタンナーにしか得られない達成感がある

 

これまで述べてきたように、パタンナーという職業は、専門的なスキルの深さが求められるだけでなく、他部門との連携が必要不可欠なため、仕事の範囲が広くなっています。従って、経験則で判断して進める対応力も必要になってきます。

 

その点で、精神的な負担も大きく、2、3年くらいの経験で満足な型紙を引けるほど甘くはないのが現実です。
型紙と、それを基にして完成した服とは密接な相関関係にありますが、これをしつかりと把握できるようになるのは、簡単なことではありません。経験者はそれを教え、人材を育成するのも使命の1つですが、時間に追われる中、つきっきりで面倒を見るわけにはいきません。まして感性を要する表現方法などは、一度や二度教わって、習得できるものではありません。

 

パタンナーとは、自身の力量がそのまま現実の形になる仕事とえいます。そのレベルが低ければ、どんなに頑張ってみても低レベルの型紙にしかなりません。しかし相当なべテランだからといって失敗がないわけではありません。

 

実際の製図の過程において、理論の解釈や表現上の答えはI っとは限りませんし、いくら経験を積んでいても戸惑うことは日常茶飯事です。しかも、キャリアを積んでいても個人的な能力差は必ず出てきます。難易度の高い型紙(デザイン、素材)は、大抵べテランが受けもちますが、必すしも満足な出来映えばかりとは限りません。それだけパターンメーキングは難しい仕事なのです。だからこそ、作り上げる過程でパターンメーキングの理論を自分なりに展開させ、テクニックを駆使してよい服ができたとき、その達成感は何ものにも替えがたいものがあります。